文書情報管理士

木戸修 (編) (2017)『文書情報マネジメント概論』日本文書情報マネジメント協会. の章立てに合わせて、覚えておきたい用語をメモしておきます。

文書情報マネジメントとは

  1. 文書の寿命特性

    文書を使う頻度が時間とともに変化すること。

  2. 文書のライフサイクル

    「作成・発生 > 処理 > 保管 > 保存 > 廃棄」の流れ。前の三つのフェースでは文書がよく使われるのに対して、後ろの二つのフェーズではほとんど使われなくなる。文書が使われるかどうかを「現用文書」「半現用文書」「非現用文書」と呼び分ける。「作成・発生」「処理」「廃棄」はだいたいそのままの意味。「保管」と「保存」のちがいは情報の扱い方? キャビネットなどでいつでも参照できるように取っておくのが「保管」であり、倉庫などに情報として直期間残しておくのが「保存」である。

  3. メタデータ

    データについてのデータ。情報についての情報。つまり、情報のタイトル、保存期間など。プロパティ情報とも。

  4. ファイリングとレコード・マネジメント

    ファイリングが文書管理で、レコード・マネジメントが記録管理? ちがいがはっきりしない。

  5. アプレイザル

    業務を評価すること。その評価によってどんな記録を作成し、どのくらいの期間にわたって保存するかを決定する。

  6. 法定保存文書

    法律で保存が義務づけられている文書。

  7. オープン・クローズ戦略

    知識を共有したり独占したりすることで、利益拡大を目指すという戦略。

  8. 営業秘密の三要件


    秘密管理性: マル秘などで秘密がちゃんと管理されていること。
    有用性: だいたい有用らしい。公序良俗に反するものは除く。
    非公知性: 一般には入手できないこと。

  9. PL法

    Product Liability 法。製造物の欠陥により被害を被ったさいに、製造業者に対して損害賠償を求めることができることを定めた法律。時効は製品引き渡し / 被害が生じたときから10年。

  10. バイタルレコード

    組織の継続のために必要な記録。ほかの記録によって代替不可能?

  11. 暗黙知と形式知

    長年の勘のような見えない知識と説明書に書けるような見えない知識。

  12. 先使用権

    せんしようけん。他社から特許出願があったが、それよりも前に同様のものを発明していた。その場合に、他者の特許権を無償で使用することができるという権利。

  13. ディスカバリー制度

    裁判が起きたさいに、関連情報をすべて開示しろという制度。電子データも開示されることから「eディスカバリー制度」という呼び方もある。

ファイリングとは

  1. 文書管理規程類で決めること

    文書分類基準と管理方法、保存年限、文書削減判断基準、電子化基準、ファイリング基準と改善手順。

  2. 各部門で決めること

    管理文書の種類、保存年限、フォルダーの作成方法とその命名法。

  3. ワリツケ方式とツミアゲ方式


    ワリツケ方式: 組織図を上から作るかんじ。トップダウン。
    ツミアゲ方式: 組織図を下から作るかんじ。ボトムアップ。

  4. 置き換えと移し替え


    置き換え: 不要なものを廃棄し、残ったものを書類倉庫に移すこと。
    移し替え: 不要なものを廃棄し、残ったものをキャビネット内の別の位置に移すこと。

  5. ファイル基準表

    ファイルの戸籍謄本のようなもの。

電子化プロセス

  1. ボーンデジタルとスキャン文書


    ボーンデジタル: 最初から電子的な文書であるもの。電子文書。
    スキャン文書: 紙媒体の文書を電子的な文書にしたもの。電子化文書。

  2. 標本化と量子化と符号化


    標本化: たとえば、生の音を連続した値として読み取ること。
    量子化: 標本値に近似する整数を音の大きさとみなすこと。
    符号化: 量子化した値を二進数として表すこと。

  3. RGBとCMYK


    RGB: Red Green Blue の略。加色混合。ディスプレイなど、自分で光るものに当てはまる。光の三原色。
    CMYK: Cyan Magenta Yellow Key plate の略。減色混合。カラー印刷のように光を反射するものに当てはまる。色の三原色。

  4. 解像度と諧調


    解像度: どれくらいの細かさで読み取るか。dpi (dot per inch)。
    階調: 白から黒までの段階を何段階するか。ビット。

  5. 人間の解像度と諧調


    解像度: 400-500dpi。たとえば、これ以上細かい線は判別できないらしい。
    階調: 200階調。これより細かいちがいは識別できないらしい。

  6. 2値、グレースケール、24ビットカラー


    2値:1ピクセルを1ビットで表す。
    グレースケール: 1ピクセルを4-8ビットで表す。
    24ビットカラー: 1ピクセルを24ビットで表す。

  7. フルカラー、ハイカラー、インデックスカラー


    フルカラー: 24ビットカラーや32ビットカラー。
    ハイカラー: RとBが5ビットで、Gが6ビットのカラー。
    インデックスカラー: 任意の8ビットを抜き出したカラー。

  8. モスキートノイズ

    JPEGとして圧縮したときに文字が滲むこと。

  9. JPEG2000

    JPEGよりも高品質な圧縮を可能にしたフォーマット。

  10. LZW圧縮、ハフマン圧縮、CCITT G3/G4圧縮、算術符号圧縮、JBIG圧縮


    LZW圧縮: 可逆圧縮。GIF, TIFF。
    ハフマン圧縮: 可逆圧縮。繰り返しに強い。
    CCITT G3/G4圧縮: 可逆圧縮。ファックス。
    算術符号圧縮: ハフマン圧縮の改良版。
    JBIG圧縮: 可逆圧縮。1/20のサイズに。

  11. フラットベッド型、シートフィーダ型、オーバーヘッド型、ドラム型、ハンドヘルド型、フィルムスキャナー、マイクロフィルムスキャナー


    フラットベッド型: ガラス面で読み取り。ADF付きの場合もある。CIS (Contact Image Sensor) と CCD (Charge Coupled Devices)。
    シートフィーダ型: FAXみたいな見た目のやつ。
    オーバーヘッド型: ブックスキャナー。
    ドラム型: 原稿をドラムに巻き付けて回転させる。
    ハンドヘルド型: なぞる。
    フィルムスキャナー: 写真フィルム特化。
    マイクロフィルムスキャナーマイクロフィルム画像の文字を読みやすく電子化。

  12. シェーディング補正、コントラスト補正、2値化、ディザ処理、強調処理


    シェーディング補正: 最初に白色版の白色を基準にすること。
    コントラスト補正: 出力諧調と入力諧調のバランスのこと。トーンカーブ。トーンジャンプすると不自然な階調になる。
    2値化: 白と黒の境界 (スレッシュホールド) を決めること?
    ディザ処理: ドット密度を変えること。
    強調処理: 線のエッジを強調すること。

  13. PDF/A、PDF/E、PDF/X、PDF/UA


    PDF/A: Accessibility。長期保存用の規格。
    PDF/E: Engineering。技術情報交換用の規格。
    PDF/X: Exchange。印刷用の規格。
    PDF/UA: Universal Accessibility。ユニバーサルアクセス用の規格。

  14. BMP、EPS、RAW、DNG


    BMP: Windows Bit MaP file の略。Windows の一般的なファイル形式。
    EPS: Encapsulated PostScript file の略。ポストスクリプトで記述された図版を画像ファイルとして保存。
    RAW: そのまま「生」という意味。JPEGはRAWデータを現像したもの。
    DNG: Digital NeGative の略。互換性の問題を解決するためのファイル形式?

  15. ドロップアウトカラー、ダブルフィード検出、スキュー補正


    ドロップアウトカラー: 特定の色を認識しないこと?
    ダブルフィード検出: 原稿の送り込み (フィード) が複数枚であることを検出する。
    スキュー補正: 傾き補正。

  16. 試験標板の図票

    解像力図票、文字図票、ISO No.1 試験図票、濃淡階調図票、同期性図票、対角線図票、カラー写真図票

  17. PSNR, SSIM

    いずれも画像の圧縮前と圧縮後の差を評価するための方法。
    PSNR: Peak Signal to Noise Ratio の略。元画像とノイズの比率。-30/30-40/40-。
    SSIM: Structural SIMilarity の略。よくわからないが、人間の目での評価と似ているらしい。-0.90/0.90-0.98/0.98-。

文書情報の活用

  1. ダブリンコア

    メタデータ記述に使用する標準語彙。

  2. 伝票OCR vs. 文書OCR


    伝票OCR: 必要な箇所だけ部分的に読み取るOCR。
    文書OCR: 原稿全体を読み取るOCR。

  3. オムニフォント読み取り

    手書きを含むどんな書体の文字をも認識するという読み取り。

  4. キーワード検索、ディレクトリ検索、全文検索、シソーラス検索、概念検索


    キーワード検索: キーワード (文書名、作成日など) をメタデータとして登録しておき、検索する。
    ディレクトリ検索: 階層化された情報を検索する。
    全文検索: すべての情報から検索をかける。
    シソーラス検索: 同義語を検索する。
    概念検索: なんとなく類似・関連するものを検索する。いわばグーグル検索。

  5. 文書情報管理システム導入のメリット5

    コンプライアンス、コラボレーション、顧客関係、費用対効果、継続性

  6. ECM

    Enterprise Content Management の略。部門やシステムの壁を越えた情報共有・運用・管理。

文書情報の保存

  1. リテンション

    文書の保存期間。

  2. RAIDの種類


    RAID-0: データを均等に分散し、複数台のディスクに記録する。ストライピング。
    RAID-1: 同一のデータを複数のディスクに記録する。ミラーリング。
    RAID-5: データを均等に分散し、複数台のディスクに記録する。さらに、エラー修正のためのパリティを各ディスクに記録する。
    RAID-6: エラー修正のためのパリティを二種類もつ。

  3. マイクロフィルムベースの移りかわり

    ニトロセルロース > トリアセテートセルロース > ポリエチレンテレフタレート。

  4. 保存環境別の温度条件 (光ディスク)

    長期保存環境: 10-25。オフィス環境: 5-30。

  5. 保存温度条件 (磁気テープ)


    DOS/DAT: 5-32。
    8mm 系: 5-32。
    DLT/SDLT: 18-26。
    LTO: 16-32。
    Enterprise 系: 5-32。

  6. HOTデータ、WARMデータ、COLDデータ


    HOTデータ: アクセス頻度高。高速で取り出す。
    WARMデータ: アクセス頻度低。すこし低速でコスト下げる。
    COLDデータ: 保存するが利用しない。安価な媒体。

  7. OAIS

    Open Archival Information Systems の略。開放型アーカイブ情報システム。デジタルデータの長期保存に関する技術標準。

  8. マイグレーションの四種類


    リフレッシュメント: 内容を変更せずにメディアを交換すること。
    複製: 内容を変更せずに複製すること。
    リパッケージング: すこし内容を変更してマイグレーションすること。
    変換: 内容を変更するマイグレーション。復元可能なリバーシブルと復元不可能なノン・リバーシブルがある。

文書情報の廃棄

  1. 重複排除

    自動的に重複データを検索して削除すること。

  2. デジタルフォレンジック

    デジタルデバイス上の情報を収集・分析すること。

リスクマネジメントとセキュリティ

  1. 情報セキュリティポリシーの三階層

    基本方針 > 対策基準 > 実施手順。

  2. EDRMモデルの流れ

    情報ガバナンス > 情報識別 > 情報保全 & 情報収集 > 情報処理 & 情報審査 & 情報分析 > レポート作成 > レポート提出。

  3. ISO27001

    ISMSに関する国際規格。

  4. CRO

    Chief Risk Officer の略。最高リスク管理責任者。

コンプライアンスとアカウンタビリティ

  1. 内部統制とコーポレートガバナンス


    内部統制: 守るべき規則を守らせるための管理。
    コーポレートガバナンス: ステークホルダーなどによって企業経営の方針や仕組みなどを統制する仕組み。

  2. コンプライ・オア・エクスプレイン

    原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか。

  3. タイムスタンプによる証明2と電子署名による証明1


    存在証明: タイムスタンプの時刻よりも前に存在していたことの証明。
    非改ざん証明: タイムスタンプの時刻よりも後に改ざんされていないことの証明。
    作成責任証明: 誰が作成・承認したかという証明 (電子署名)。

  4. NTA, TAA, TSA


    NTA: National Time Authority の略。国家時刻標準機関。
    TAA: Time Assessment Authority の略。時刻配信業務認定事業者。
    TSA: Time-Stamping Authority の略。時刻認証業務認定事業者。

  5. PKI方式、アーカイビング方式、リンクトークン方式


    PKI方式: デジタル署名を用いたタイムスタンプ方式。タイムスタンプ局の秘密鍵で暗号化し、公開鍵で復号する。
    アーカイビング方式: タイムスタンプトークンをタイムスタンプ局に保管するというタイムスタンプ方式。
    リンクトークン方式: 利用者を関連づけたリンク情報というものを作成し、新聞に公開するというタイムスタンプ方式。よくわからない。

  6. 真正に成立したもの

    本人の意思に基づいて作成されたもの。

  7. CRL

    Certificate Revocation List の略。有効期間内であるにもかかわらず、電子証明書が効力を失った場合、このリストに記載される。

  8. 電子署名とタイムスタンプの有効期間


    電子署名: 1-3年間。
    タイムスタンプ: KPIなら10年間。アーカイビングならなし。

  9. Detached型、Enveloping型、Enveloped型


    Detached型: 分離形式。署名データと署名対象データが別々。
    Enveloping型: 内包形式。署名データが署名対象データを含む。
    Enveloped型: 包含形式。署名対象データが署名データを含む。

  10. CAdES, XAdES, PAdES


    CAdES: CMS Advanced Electronic Signature の略。Detached と Enveloping。
    XAdES: XML Advanced Electronic Signature の略。全形式。
    PAdES: PDF Advanced Electronic Signature の略。Enveloped。

プロジェクトマネジメント

  1. プロジェクトワークの反意語

    ルーチンワーク。

  2. 10の知識エリア

    統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダ。

  3. ファシリテーション

    会議のさいに発言を促したり認識の一致を確認したりすること。

  4. GANTTチャートとPERTチャート


    GANTTチャート: WBSの右側にある図式。
    PERTチャート: パートチャート。クリティカルパスを探すときの図式。

  5. コミュニケーションの三形式

    双方向、プッシュ型、プル型。

  6. RFI, RFP, RFQ, SOW, SLA


    RFI: Request For Information の略。情報提供依頼書。
    RFP: Request For Proposal の略。提案依頼書。
    RFQ: Request For Quotation の略。見積依頼書。
    SOW: Statement Of Work の略。作業範囲記述書。
    SLA: Service Level Agreement の略。サービスレベル合意書。

  7. ステークホルダーの五段階

    不認識、抵抗、中立、支持、指導。

  8. プロジェクトで大切なもの三つ

    コスト、時間、品質。

  9. スコープ・クリープ

    プロジェクトのスコープが知らないうちに広がること。

  10. テーラリング

    マニュアル通りではなく、状況に合わせてマニュアル等を手直しすること。

法令・ガイドライン

  1. IT基本法

    IT関連法の土台となる法律。

  2. IT書面一括法

    紙での公布・手続きを電子化できるようにする法律。

  3. e-文書法

    通則法と整備法から成る。通則法は文書の電子保存を容認する。整備法は通則法で足りないものに対する規定。

  4. 電子帳簿保存法

    紙出力での保存から電子データのままの保存。

  5. 会社法

    議事録や会計帳簿の作成と保存を義務づける。

  6. J-SOX法

    財務・企業情報を開示させる。

  7. 電子署名法

    電子署名つき文書の真正性を証明する。

  8. 個人情報保護法

    個人情報取扱事業者に対する義務。

  9. マイナンバー法

    マイナンバーの流出等を防ぐ。

  10. PL法

    消費者は損害と欠陥の因果関係を立証すれば、メーカーに責任を問うことができる。

  11. 行政手続きオンライン化法

    その名の通り。三法をまとめて。

  12. 情報公開法

    行政文書の管理について定めた法律。

  13. 公文書管理法

    公文書や行政文書の管理について定めた法律。

  14. 公文書館法

    公文書館に関する法律。

  15. 特定秘密保護法

    とくに秘匿すべき特定秘密に関する法律。

  16. 著作権法

    著作権の保護期間は死後70年。

  17. 民事訴訟法

    紙の文書でない、写真、磁気記録なども証拠能力が認められた。

  18. 刑事訴訟法

    デジタルデータの証拠能力が認められつつある。

  19. 不正競争防止法

    公正な競争を遵守させる。

  20. 電磁的保存の要件

    見読性、完全性、機密性、検索性。

  21. 国税庁関係書類の電子化要件

    可視性、真実性。

  22. 医療情報の電子化要件

    見読性、真正性、保存性。